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【Store Blog】終わらない環状線〜山手線一周録〜

【Store Blog】終わらない環状線〜山手線一周録〜

「河野くん、ブログ書いてみない?」

増田店長からの一言により、しがない雑兵の私にお鉢が回ってきたわけですが……
何を書こうか、何を伝えられるか、そして何を残せるか。
三日三晩、寝食を忘れて考えていました。

そんな私の様子を見かねたのか、増田店長から思いもよらない提案が飛んできました。

「河野くん、山手線一周しようよ」

まさに天啓でした。

埼玉の片田舎に生まれ育ち、大学卒業を機に住まいを構えることとなった山手線沿線。
沿線に住んでいたとは言っても、私が根城にしていたのは駒込や巣鴨という渋めのエリアです。
渋谷や恵比寿といった都会の香りを押し付けてくる“スメハラタウン”とは程遠い場所でした。

そんなキラキラプレイスを含む山手線に、野暮ったさ全開の私ごときが足を踏み入れて良いものか……
またも三日三晩悩んでいると、店長から追い打ちメッセージが。

「山手線一周、走ろう!」

走る……?
歩行ではなく、走行?
人類が進化の過程で獲得した最強の生存戦略のひとつである、あの“走る”という行為ですか?

疲れることが何よりも嫌いな私にとって、山手線を己の足で走るなんて発想は脳裏の片隅にもありませんでした。
しかし、店長からの誘いを断るわけにはいきません。
半端者の私を拾ってくれた恩人に報いるため、意を決して大都会のループへ飛び込むことになったのです。


<果てなき鉄路>

 

山手線という巨大なループ

さて、関東(東京)にお住まいの方にはすっかりお馴染みの山手線ですが、改めてご説明させてください。

30の駅が結ぶ全長は約35km。
1日に100万人以上が利用するという、世界屈指の超高密度・大量輸送路線です。
そんな山手線に沿った道を結ぶと、実距離はおおよそ40km超。
フルマラソンとほぼ同じ距離になります。
しかし環状線であるがゆえに、どの駅からスタートしてもいいし、いつでも最寄りの駅に逃げ込んでリタイアできる。
どこからでも始められ、どこからでも終わることができる“エンド&スタート”なコースなのです。

 

ゆる〜くスタート

運命の日。
集まったのは栃木出身の増田店長、埼玉出身の私、そして神奈川出身の長島氏です。
大都会の恩恵に預かってきた者たちによる完璧な布陣ですが、実は私たちにはもうひとつの顔がありました。

増田店長と私は、アメリカ西海岸を縦断する『PCT(パシフィック・クレスト・トレイル:約4,200km)』を、
そして長島氏はニュージーランドを縦断する『Te Araroa(テ・アラロア:約3,000km)』を歩いた経験を持つハイカーなのです。

何千キロもの過酷な大自然を己の足で踏破してきた猛者たち。
それに比べれば、起伏のない山手線の40kmなど、“ちょっとした散歩”に過ぎません。
無敵の脚力を持つ我々は、武者震いをしながら集合場所であるVivobarefoot東京店へ向かいました。

「(長島)たいがくん寝坊したって」

店長から衝撃の報告。
その瞬間、緊張の糸がプツンと切れたのか、長島氏が到着した後もしばらくダラダラと過ごしてしまい、スタート時間は大幅に遅れることとなりました。

集合から1時間後、重い腰を上げて向かったのは、原宿駅。
ここから外回り(時計回り)で山手線攻略が始まります。


<旅のはじまり、原宿駅にて。ダラダラしがちな我々>

 

原宿をスタートし、代々木、新宿のコンクリートジャングルをすり抜け、新大久保の多国籍な香りに後ろ髪を引かれながら、高田馬場、目白、池袋と順調に北上。
そして大塚を経て、辿り着いたのは私の古巣である巣鴨と駒込です。

<沿線から外れ寄り道。『巣鴨地蔵通商店街』にて>

 

もうひとつの東京へ

実はこの辺りから、山手線の景色はガラリと表情を変えます。
渋谷や上野のような「これぞ大都会」という威圧感は消え去り、そこにあるのはどこか懐かしく、穏やかな日常です。
山手線沿線移住を検討中のあなた、巣鴨、駒込にぜひ。

<駒込と田端の間にある山手線唯一の踏切『第二中里踏切』>

 

田端、西日暮里、日暮里、鶯谷と、駅間が短い下町エリアを駆け抜け、上野、御徒町へ。
秋葉原からは、ムーンライトギアに寄って息抜きをしようと画策するも、無情にも定休日。

<我らがムーンライトギア ※12時~20時 (日曜12時〜18時)、月・火・水曜定休、臨時休業等の情報はwebまたはInstagramをご確認ください>

 

神田から東京駅。
東京を象徴する赤レンガ造りの丸の内駅舎を目の当たりにすると、やはり田舎者の血が騒ぎ高揚してしまいます。
そこからは高架下沿いに有楽町へ抜け、新橋、浜松町、田町とビジネス街を突き進みます。

<東京の象徴を支える、我が故郷・埼玉のレンガ>

 

関所(ゲートウェイ)で足止めを

2020年開業、山手線で最も新しい駅である『高輪ゲートウェイ』に到着。
この高輪という地域には、江戸時代に『高輪大木戸』という関所のようなものが設けられていました。
旅人が東海道から江戸の町へ出入りするための、まさに『江戸の玄関口(ゲートウェイ)』として機能していた歴史的な要衝です。

そんな蘊蓄を私から浴びせられていた長島氏から予想外の返答がありました。

「ちょっと膝痛いかも……」

耳を疑いました。
ニュージーランドの荒野を3,000kmも歩き通した男の口から、たかだかスタートして数十kmの舗装路で飛び出した弱音。

「疲労のせいか、ちょっとランニングフォームが乱れてたみたいだ」

痛む膝をさすりながら、長島氏は冷静に自己分析しました。

今回、我々3人が相棒に選んだシューズは『PRIMUS FLOW』
通気性の高さは申し分なく、蒸し暑い都市でのランニングには最適でした。

<足裏でコンクリートを読む>

 

しかし、Vivobarefootのシューズは、足本来の筋力やバランス感覚を取り戻すためのものであり、分厚いクッションで足を守り、衝撃を吸収してくれるわけではありません。

己の足の機能だけで、この起伏のない硬質なコンクリートを何万歩と叩き続ける。
それは、疲労によるフォームのわずかな乱れや着地の癖を容赦なく浮き彫りにし、ダイレクトに身体へと伝えてくる、ある意味で残酷な“路面との対話”でもありました。

コンクリートという無機質な路面の恐ろしさと、PRIMUS FLOWの誤魔化しのきかない正確なフィードバックが、長島氏の膝の限界を正直に告げていたのです。

<寝坊して膝も壊す長島氏>

 

ーー彼の言葉で、私の脳裏には昨年の苦い記憶が鮮烈にフラッシュバックしました。

思い返せば長島氏とは、東京店で同時期に働き始めた、いわば同期。
山が好きなもの同士……のわりに国内の著名な山に登った経験が少ないという共通点もあり、それを払拭するためにふたりで富士山に登頂したこともありました。

そして昨年の秋、私たちは共にトレイルランニングの大会に出場したのです。
42kmのコースに挑戦するも、20km付近で私の膝に激痛が走り、走ることができなくなってしまいました。

そんな私に長島氏は隣で寄り添い、励まし、サポートし続けてくれました。
結局、歩きながらも制限時間内にゴールすることができたのは、彼のおかげです。
ひとりだったら、私は間違いなくあの場に崩れ落ち、リタイアを選択していたことでしょう。

 

<初のトレラン出場。痛みは走り、身体は走れない。鯖の足は速い。日本語は難解で面白い>

 

先を行く増田店長の背中が、少しずつ遠ざかっていく。
足の裏から伝わるアスファルトの鈍い痛みが、思考を麻痺させようとする中で、私は目の前の同期を見つめました。

今度は、彼が苦しんでいる。

 

店長、お仕事の時間ですよ

かつてトレイルで私を救ってくれた恩人が、目の前で膝を抱えている。
ここで彼を置いて先を急ぐ選択肢など、私にはありませんでした。

「歩こう」

私たちはそこから走行を断念。
一歩一歩、硬いアスファルトを噛み締めるように品川駅、そして大崎駅への道をトボトボと歩きました。

そんな中、店長の言葉と共に、時計の針が無情な現実を告げます。

「ごめん、18時からミーティングあるわ」

大都会のループに挑んだ私たちの旅は、大崎駅にて『店長の仕事』という極めて現実的な大人の事情によって幕を閉じることとなったのです。

<旅のおわり、大崎駅にて。安堵の長島氏>

 

エンド&スタート

結局、山手線一周という大風呂敷を広げながら、私たちは完全なる“未完”のまま、大崎駅の改札へと吸い込まれていきました。

完走はできず、足は棒のよう。
けれど、不思議と絶望感はありません。
なぜなら冒頭でも述べた通り、山手線は環状線(ループ)だからです。

どこから始めてもいいし、どこで終わったっていい。
ここで一度途切れたように見える私たちの足跡も、次の挑戦への助走に過ぎません。

私たちの足は、大崎駅で一度止まりました。
けれど、Vivobarefootのスタッフとして、そしてひとりの人間として、私たちの旅がここで終わったわけではありません。

残された大崎〜原宿のピースを埋めるその日まで、私たちの足裏は、次なるスタートの感覚を研ぎ澄ませているのです。

<またいつの日か>

 

(翌日のGW明け、店舗の立ち仕事が絶望的なまでに憂鬱だったことだけは、ここに白状しておきます)

 

writer:Kouno (@vivobarefoot.tokyo)




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北海道を3足の靴で過ごす。

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東京の増田・京都の高本・札幌の吉田と僕、スタッフ4人で、北海道を巡る雪板トリップへ。総移動距離 約1,500km。車で移動しながら、雪板で遊び、食やローカルの空気に触れる8日間。
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2026年2月。
僕にとっては人生初となる冬の北海道へ来た。
「雪スゴ、、、、、」
街とは思えない雪の量で、車道も歩道も踏み固められ辺り一面が真っ白。関東近郊で育った僕にとってはカルチャーショックレベルだった。
大学時代から趣味でスノーボードをしていたこともあり、冬の北海道にはずっと憧れがあった。
とはいえ、今年の札幌エリアは特に雪が多いようだ。
「山の方は大丈夫なのか?」
少々の不安とこれから始まる旅に大きな期待を膨らませていた。

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