自分の足を3Dスキャンし、その一人ひとりの足を起点につくられるVivoBiome "Tabi Gen 02”。
既製のサイズから自分に合うものを選ぶのではなく、まず自分自身の足を知り、その形から一足が生まれていきます。
今回VivoBiomeを体験したのは、Vivobarefoot Japanアンバサダーであり、サーファーの石川拳大さん。

日々海に入り、自然と身体を通して向き合いながら、長年Vivobarefootを履き続けてきた石川さんは、VivoBiomeをどのように感じたのでしょうか。
話を聞いていくと、見えてきたのは単なる「履き心地」だけではありませんでした。
身体が本来持っている力。道具と人間との関係。そして、石川さんが大切にしている「原点回帰」という考え方。
自分の足から生まれた一足を入り口に、身体のこと、自然のこと、そしてこれからのものづくりへと、話が広がっていきました。
「自分の足をスキャンして、靴をカスタムオーダーするってことが初めてだったので。自分の足がどういう状況にあるのかというのも、知りませんでした」
普段、自分の足について考えることはあっても、その形やサイズを正確に知る機会は意外と少ないものです。
石川さん自身も、それまで自分の足は25.5cmくらいだと思っていたそうです。ところが実際にスキャンしてみると、想像していたよりも自分の足のサイズが小さかったことを知りました。
そして、完成した "Tabi Gen 02”を初めて手にした時。
「届いた時に、まさに形も自分の足のアウトラインになっていて、すごい嬉しかったですね」

石川さんにとって、身体に合わせてものをつくることは、決して特別なことではありません。
普段使っているサーフボードも、シェイパーに自分のスタイルや身体に合わせてオーダーすることがあります。一方で、石川さん自身が木を削り、カービングしながらつくっている"アライア"もあります。
「サーフボードとかも全部手作りだし、オーダーしたりするんですよね。それと何か似たようなものを感じて、作り手さんとの距離感が少しでも近づくといいなって思って」
自分の身体から、自分のためのものが生まれていく。
VivoBiomeの体験は、履いた瞬間ではなく、「自分の足を知る」ところからすでに始まっているのかもしれません。

海辺で生活する石川さんは、以前からVivobarefootのサンダルを待ち望んでいたそう。
実際に "Tabi Gen 02”を履いてまず感じたのは、その開放感。そしてもうひとつ、繰り返し話していたのが「グリップ」でした。
「ここまでグッと掴めるのって、あんまり他のモデルではなかったと思う。より足の裏のような感覚で過ごせている気がします」
「指も感じるし、足の裏まで全部感じる。このグリップが気持ちいいですね」
歩いている時だけではありません。
日常の中で身体を動かした時、その感覚はさらにわかりやすくなるといいます。
なかでも石川さんが違いを感じたのが、スケートボードでした。

一般的なサンダルでは、足とサンダル、サンダルとボードとの間にズレを感じやすく、思い切って身体を動かすには少し怖さがあります。
ところが "Tabi Gen 02”では、足元がしっかりついてくるような感覚があったそうです。
「サンダルでスケボーをするなら、安心して滑れるのはこれが唯一かもしれないです。足との密着度がすごく高いから、安心感があります」
足を守るために何かを足していくのではなく、できるだけ身体と地面との距離を近づける。
すると、足自身が地面から情報を受け取り、掴み、自分で動こうとします。
そこに石川さんは、長年続けてきたサーフィンとの共通点も感じていました。

石川さんが高校生の頃から乗り続けている「アライア」というサーフボードがあります。
古代ポリネシアのサーフボードをルーツに持つ、一枚の木からつくられたとてもシンプルな板です。
現代のサーフボードのように、乗り手を助けてくれる機能はほとんどありません。
だからこそ、乗るのはとても難しいそう。

「全部繊細なんで、全部“点”で捉えなきゃいけなくて。身体の点とボードの点と波の点がちゃんと合わさらないと、波に乗れない」
道具がやってくれることが少なくなると、その分、自分の身体がやらなければならないことが増えていきます。
「今の時代はできるだけ便利になろうと道具に頼って、道具を進化させようとするけど、そうすると自分の身体もマインドも退化していってしまう。でも、アライアに乗るためには、自分を進化させなきゃいけない」
この感覚が、石川さんにとってVivobarefootと重なります。
履けば自動的に身体を良くしてくれるわけではありません。
足が自由に動ける余地をつくることで、むしろ自分自身の身体を使う必要が生まれてきます。
「Vivoって結局、履いてるだけで身体が良くなるっていうよりも、自分でちゃんと考えて、プロセスを踏んで、もっと調子良くなるみたいなものだと思ってて」
道具が身体の仕事をすべて代わりにするのではなく、身体にできることを、身体へ返していく。
それはVivoBiomeを考えるうえでも、とても大切な視点です。

便利な道具は、私たちが意識しなくても目的を達成できるように進化してきました。
だからこそ、普段使っているものについて、立ち止まって考える機会は少なくなっています。
けれど石川さんは、Vivoには少し違う側面があると話します。
「その道具を使うことによって考えて、自分を改善していくみたいなプロセスがある」
そして、こう続けます。
「なかなかそういう道具って、あんまりないなと思うんですよね」
足は今、どう動いているのか。
どこで地面を捉えているのか。
自分の身体には、本当はどんなことができるのか。
道具そのものが答えを与えてくれるのではなく、使うことで自分の身体へ意識が戻ってくる。

VivoBiomeもまた、完成した一足だけが体験ではないのかもしれません。
自分の足をスキャンし、その形を知る。
自分のためにつくられたものを履き、歩き、動いてみる。
そこからまた、自分の身体について新しい発見が生まれていきます。
石川さんが自身の活動の中で大切にしている言葉に、「原点回帰」があります。
アライアに乗ることも、そのひとつです。
競技としてサーフィンを続けていた高校生の頃、オーストラリアで初めてアライアに乗りました。
扱うのが難しいその板で一本の波に乗れた時、4歳で初めて波に乗った時の感動を思い出したといいます。
「自分のキャリアの原点と、サーフボードの原点というのが、そのタイミングですごくハマって」
それ以来、自分にとってサーフィンとは何なのかわからなくなった時や、大切な感覚を忘れていると感じた時に、アライアと海へ向かいます。
ただ、石川さんのいう「原点回帰」は、現代のものを捨てて、昔の暮らしへ戻ることではありません。
「0か100じゃないんですよね。そんなこと言ったら、車も乗るな、歩けよ、みたいな話になってくる」
便利なものも使う。最新の道具も使う。現代社会の中で生活する。
その上で、ときどき原点へ戻ってみる。
「人間って絶対忘れるじゃないですか。でも忘れたタイミングで、自分の一番大事なものに原点回帰してみる」
過去へ戻るのではなく、本来持っていたものを思い出して、そこからまた前へ進んでいく。
そんな「原点回帰」のあり方が、石川さんの言葉から見えてきます。

その感覚は、アライアとの向き合い方にも表れています。
石川さんが使うアライアには、漆が施されています。
「漆は今では工芸品と思われがちなんですけど、実は縄文時代から使われている、実用的で身近なもの。長い時間を経ても残っていくものでもあるんですよね。」
「普通のサーフボードは発泡スチロールで出来ているので、どうしても経年劣化する。でも、漆塗りの木の板は、自分の子どもやその先の世代まで残っているかもしれないと思うと、面白いんですよね」
その言葉の背景には、ものを「つくって終わり」にするのではなく、時間を超えて残していくことへの興味があります。
そして、その感覚には石川さん自身の原体験もあります。
今も現役の大工であるお父さんは、石川さんが幼い頃から、何か欲しいものがあれば「とりあえず木で作ってみる」という人だったそうです。
「木って何でもどうにでもなるというのを教えてくれたから」
そんな環境で育った石川さんも、今では自分の子どもと一緒にものをつくります。最近、子どもが「船を作ってみたい」と言ったときには、ベニヤ板を船の形に切って、ボンドでくっつけて、実際に形にしてみたそうです。
お父さんから教わった「まず自分でつくってみる」という感覚が、今度は子どもへと受け継がれている。
原点回帰とは、過去に戻ることではなく、自分が受け取ってきたものをもう一度見つめ、それを今の自分なりの形にして、次へ渡していくことなのかもしれません。

ここで、VivoBiomeの面白さがもうひとつ見えてきます。
目指しているのは、人間の足が本来持っている形や機能を尊重し、できるだけ裸足に近い状態で動けるようにすること。
一方、それを実現するために使われているのは、3Dスキャンや3Dプリンティングといった新しいテクノロジーです。
身体の原点へ向かいながら、使っているのは未来の技術。
この関係について尋ねると、石川さんはシンプルに答えました。
「原点回帰をしてるけど、最新技術でやっているということですよね」
そして、薄いVivoBiomeのソールについて、こんなことも話します。
「この薄さで歩けるって、結構奇跡だなと思うんです。でもそれって、ある程度の技術がないとできないことなのかなって思うし」

昔の履物をそのまま再現するのではなく、今の技術を使うことで、現代の暮らしの中でも足本来の感覚へ近づいていく。
「原始的な部分と、今のテクノロジーのハイブリッド。僕の世界観にはなかったことをしてくれている」
テクノロジーというと、私たちの身体がやっていたことを代わりにやってくれるものを想像しがちです。
でも、テクノロジーを使って、身体がもっと自由に働ける環境をつくることもできる。
VivoBiomeが探っているのは、そんな新しいテクノロジーと身体の関係なのかもしれません。
「できれば常に裸足でいたいけど、それって無理じゃないですか」
海や自然の中で過ごすことの多い石川さんにとっても、現代社会の中ですべてを裸足で過ごすことは現実的ではありません。
だからこそ、靴という道具が必要になります。
「裸足の限界というか、今の社会で生きてる中で。でも、その限界のところで靴が現れてくれたから、本当にありがたいです」
裸足か、靴か。
自然か、テクノロジーか。
原始的か、未来的か。
どちらかを選ぶのではなく、その間に新しい可能性をつくっていく。
VivoBiomeというプロジェクトも、その延長線上にあります。

VivoBiomeは、完成された答えではありません。
実際に履く人たちの身体やフィードバックをもとに、これからも変化し、アップデートしていくプロジェクトです。
実際に履いた石川さんにも、「この先、こんなふうになったら」というイメージが生まれています。
「靴下感覚で履けるような。日本の地下足袋みたいな」
現在の薄さやグリップ感を活かしながら、さらに足との一体感を高めていくこと。
サンダルという現在の形を超えて、より裸足に近い感覚の履物へと進化していくこと。
そんな未来の可能性についても、話は広がりました。

これまでの靴づくりでは、あらかじめ用意された形やサイズの中から、自分に合うものを探すことが当たり前でした。
でも、一人ひとりの足をデータとして捉え、その身体を起点にものをつくることができるようになったら。
靴と人間の関係は、これからもっと変わっていくかもしれません。
自分の足をスキャンする。
自分の足を知る。
自分の身体から生まれたものを履く。
そして地面を感じながら、歩き、動き、また自分の身体を知っていく。
最新のテクノロジーを使いながら、向かっている先は、私たちがずっと持っていたもの。
石川さんが話してくれた「原点回帰」という言葉は、VivoBiomeが描こうとしている未来と、どこか同じ方向を向いているように感じます。

photographer : Sho Masuda
writer : Kyeonghwa Ho
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