仕事は理学療法士をしていますが、もともとなろうと思っていたわけではないんですよね。子どもの頃からずっと海洋生物が好きで、イルカの調教師になりたいと思っていました。
高校生でその後の進路を決める際に、看護師だった母の勧めもあり、「手に職をつけた方がいい」ということで、体を動かすことは好きだったので、理学療法士を目指すことにしました。
結果的には自分に向いていたと思います。人と関わったり、おしゃべりしたりすることが好きなのもあるし、幼い頃から母の背中を見ていて、いつか人の役に立つ仕事がしたいという思いがあったので。
老人保健施設や病院など、いくつかの場所で働いたのですが、一番長く働いたのは訪問リハビリの現場でした。必然的に高齢者と関わることが多く、できなかったことができるようになる嬉しさというのは、人が生きていく上ですごく大事なことなんだと感じました。
アニマルフローに出会って、体を動かすことって改めていいなと実感したんです。高齢者にもアニマルフローを生かして、テーブル等を使った練習を取り入れたりもしました。今までの自分の経験とアニマルフローがうまくミックスした瞬間でしたね。
「海外に出たい」という気持ちもずっとあって、これまでにもハワイで野生のイルカツアーのお手伝いをしたり、フィジーへ語学留学に行ったり、海洋生物を求めてオーストラリアで働いたこともありました。海をずっと追い求めているんですよね。自分が一番落ち着く、生き生きする、解放される感覚があるんです。
コロナ禍では、自宅と職場の往復しか許されない生活が続きました。自分があんなに情熱を傾けていた海に行けないことで、「人生終わった」「つまらないライフスタイルだ」「どうしよう」とすら思いました。
そこで耐えて、アニマルフローに出会って、夢中になれるものを見つけました。
人は、人とつながることで生きていますよね。コミュニティの強さはアニマルフローの魅力の一つなんです。アニマルフローを実践する中で、世界中に仲間が増えたことは大きな財産だと感じています。
年に一度、世界中のアニマルフロー実践者が集う「メンターシップ」という合宿があります。会場は毎年変わるのですが、1週間ほど世界中の仲間たちと寝食を共にして、一緒にアニマルフローを練習します。創始者のマイクや、Jinさんのようなマスターインストラクターによる講義もあれば、グループに分かれてフローを作ったり、動きを教え合ったりする時間もあります。
メンターシップに参加したことで、それまでオンラインでしか交流のなかった海外の実践者たちと直接会うことができました。また、来日したインストラクターが連絡をくれて、実際に会うことができたり、日本国内の仲間を紹介したりすることでつながりの輪が広がっていくのを実感しています。
Vivobarefootとの出会いは、2022年に初めて参加した、ギリシャでのメンターシップでした。
その時、周りのインストラクターたちがVivobarefootを履いていて、そこで初めて知ったんです。
それまで自分の足に合う靴になかなか出会えなくて。アニマルフローをしているうちに、自分の足の形や捉え方をすごく気にするようになりました。自分は内反小趾で、ねじれも入っていて、これは治らないかも…靴も気をつけた方がいいんだろうな、とは思っていたんです。そんな時、彼らにVivobarefootを教えてもらいました。
日本に帰ってきて、試着できるお店で購入したいと思い、Jinさんに聞いたりして調べてみたところ、地元兵庫県に取扱店があることを知りました。翌年コスタリカで開催されるメンターシップの直前に、ついに初めてのVivo(プライマストレイル II FG)を買うことができました。
コスタリカでは火山の麓で、道なき道を歩くような経験をしました。溶岩やコケの上を1時間以上歩いたのですが、しっかりと地面を捉えて歩いている感覚があり、滑ることもありませんでした。足の窮屈さやしんどさもなくて、自分の足にすんなりフィットしてくれました。
基本的にアニマルフローは裸足で行うのですが、屋外や靴を履かざるを得ない場所でVivoを履くと、他の靴を履いている時との可動域の違いを実感しました。
その後、プライマスライトニットやモータスストレングス、スーツにも合うような革靴、それからハイキングシューズも手に入れました。
プライマスライトニットはアッパーに伸縮性があり、ソールもより薄くて柔らかいので、アニマルフローに向いていますね。
モータスストレングスはクロスフィットの際に履いていることが多いのですが、足の側面が他のモデルよりもカバーされているので、アニマルフローをする際の強度面でも安心感があります。
Vivoを履いていると、足の指が広がる感じがすごく楽ですね。足が浮腫みにくくなりました。
アニマルフローは、老若男女問わずにみんなができる全身運動だと言われています。でも、高齢者や身体的なハンディキャップを持つ方には、四つ這い姿勢そのものが難しくもあります。そこで、一人ひとりの身体機能に合わせたアレンジを加えることで、効果や楽しさを保ったまま誰もが行える形で提供することもできるんです。そういった意味でも、多様性に溢れた運動だと思っています。
アニマルフローだけをやっていれば良いというわけではないので、運動に必要ないろんな要素のつなぎ目として、またウォーミングアップとして、健康や体の調整に使えるツールなんですよね。
子どもたち向けにやってみるのも良いと思いますし、フィットネスの場だけでなく、日常生活やコミュニティに取り入れてもらえたら嬉しいですね。
アニマルフローの動きは難しいと感じる人も多いと思います。やったことのないカラダの動きにカラダも頭もフル回転!「何これ?!」と混乱してしまう人も少なくないと思います。でも、動いていく中で自分のカラダの軸が分かってきたり、自分のカラダをコントロールできるようになったり。できなかった動きが段々とスムーズにできるようになる喜びも、楽しさの一つだと思っています。
終わった後に「なんだか体が軽い」「心地よく体を動かせた」と思ってもらえたり、体を動かすことの楽しさに気付いてもらうきっかけ、いわば接着剤のような役割を果たせたらいいですね。
自分はこの先どういう活動をしていこうか、と悩んだ時期もありましたが、アニマルフローの指導だけでなく、腰痛予防や転倒予防といった観点でリハビリにアニマルフローを取り入れたり、子ども向けのトレーニングやフレイル予防としての集団体操にアニマルフローを取り入れることもできると気づきました。
少しでも体を動かすことに興味を持ったり、痛いところがマシになったり、といったきっかけになる場を作っていけたらと思っています。
今年(2024年8月)から青年海外協力隊としてヨルダンに赴任します。ずっと憧れはあったのですが、ようやく今、「よし行こう」と思えたタイミングでチャンスをいただきました。赴任先では、理学療法士として脳性麻痺や障がいを持った子どもたちのサポートをすることになります。そこでもアニマルフローを取り入れられたらと思っています。
海ばかり追いかけるのではなく、今回は理学療法士として海外で勝負してみます。